平成23年8月27日(土)、トステム東京ショールームにて「2011住宅設計コンペ」の二次審査が行われました。今回のテーマは『環境住宅「光と風」』。審査員は吉田研介氏(吉田研介建築設計室)、豊田正弘氏(豊田編集室)、宮晶子氏(STUDIO2A)の3名。一次審査通過数は754作品のうち31作品。学生の趣向を凝らした作品が数多く集まりました。YouTubeに二次審査の様子をアップロードしましたのでご覧ください。
2,30年前、若い建築家たちの間で「仮設」という概念を持った建築がはやりました。それは、近代建築も後期に入ると、それを推進してきた先輩たちの建築の傾向がスタティックな感じで固定し始めたことに対しての反抗ではなかったかと思いますが、そこで彼らは「仮設」という概念を建築にしようとしました。形としては、風に流れるように軽やかで、いつ壊れてもおかしくないような、実際建て替えが容易な、文字通り仮設の建築をつくったのです。世の中も空前の好景気で、建築家たちは浮かれていました。ところがその頃世界では、地球規模で環境問題が持ち上がり、資源の問題が国際的にも取り上げられるようになりました。つまり「サスティナビリティ」が社会問題の軸になったのです。建築家は、あっという間も無く、転向せざるを得なくなったのです。あれは一体何だったのか、と総括するひまもありませんでした。建築家はいかに世界的な視野に目を向けていなければならないかと、痛感させられました。が、一方で、そのことを提言できるだけの見識や叡知を身に付けて建築活動できるように教育することは、私が大学で教えていたころを振り返っても不可能に近い。ただ、やってはいけないことは、一時の流行や、無責任な表層の事象をとらえてブームを作ること、そしてそれに乗ること、それだけは慎まなければならない。各専門を重んじて、建築家には建築家の現実の仕事の中での分というものがあると思います。それは何か。私は、各専門から出されたテーマに取り組んだ時の建築的解決の新しさと的確さ、そして幅の広さだと思います。そして実際の仕事においては建築としての完成度の高さを求めます。
さて最優秀賞の「からまりの家」はいかにも完成度の点では低いものですが、宮先生、豊田先生の強い推薦を認めることにしました。分割でもなく集積、連続でもない部屋の再組立ての提案に、これまでにない新しい家の環境が求められると思いました。「地下鉄の出口」のやや詩的な発想は、中心軸がずれますが、建築家の発想としては大切にしていきたい一つと認め、また造形(空間)の魅力も評価します。
「ちかい家」はやや流行的雰囲気が気になりましたが、架構体のなかの「地上」に魅力を感じました。
Kensuke Yoshida
吉田 研介(神奈川)/吉田研介建築設計室
http://chicken-house.jp
応募締切の2カ月前、大震災が東日本を襲いました。そして、福島第一原発の事故が追打ちをかけます。環境の問題、エネルギーの問題に、国民の関心がこれほどの高まりを見せているのは史上はじめてのことでしょう。コンペテーマに掲げた「光と風」は期せずして、重みのある大きな問いかけとなりました。「自然エネルギーを最大限に活用したい」という切実な社会的要請に対し、建築はどう応えられるのか。このコンペでは、数多くの学生から真摯で情熱あふれる提案が集まっていました。背筋の伸びるような思いで審査に臨むこととなったのです。
最優秀賞の伊藤+冨永案は、適度にスケールを抑えた、居心地のよさそうな空間が展開していきます。ここに佇んで家族の気配を感じられたら、また穏やかな風が抜けていったら、気持ちがいいだろうなぁと、期待を抱かせてくれる場がいくつも散見されました。大震災が突きつけたもうひとつの課題、近隣とのコミュニティに関しても、楽しく豊かな提案がされていると思います。
優秀賞の向山+行木案は、見上げた先に開けてくる空のイメージが新鮮でした。階段に面して連なる、変化に富んだ開口部もよく考えられています。
同・古川案は、リビングの大きなトップライト越しに、町並みのシルエットを眺めたパースが美しい。全体を地下に埋めたことの現実性は別として、敷地の使い方、町との距離の取り方には感心しました。
協賛者賞の一瀬+野口案の巧みに重層された空間、同・佐藤案のスリット状に入り込む緑からも、それぞれに魅力的な「光と風」を感じます。惜しくも受賞を逃したものでは、徳永真丈案の大らかなガラス面と広場、中村周案の細長い廻廊空間が印象に残りました。
この住宅設計コンペは、学生が社会のさまざまな事象と向き合える貴重な存在だと思います。これからも長く継続されることを願っています。
Masahiro Toyoda
豊田 正弘(東京)/豊田編集室
http://www.toyoda-edit.com
光と風という普遍的なテーマは、3.11以降、今日的な、批評性を帯びました。集まったドローイングは、イメージとしての光や風の提案が多かったのですが、光と同時に影(闇)について描かれているものが新しい次の世代を感じさせ、模型を見てみたいと思わせました。
模型段階では、提案が敷地内や建物内を超えた人との関係にまで届いていて、ある公共性を獲得しているものに、説得力がありました。
最優秀賞の伊藤+冨永案は、閉じた家型の床と壁をズラして光(影)と風と人の、“からまりしろ”をつくりだすという批評性と小さなスケールの場が連続的に展開する詩的で豊かな快適性と公共性が表現されていた点が、総合的に優れていました。短辺方向の構造については、原案をくずさない方法での解決を今後押さえてください。
優秀賞の古川案は、地上をゆるやかに囲った、公共のような私有のような中吊りの外部をつくりだし、地下(であることの疑問もありながら)の居住領域からそこを介して、空をみあげる情景(関係)の中に、守られながらも世界と同時にある、というイメージを喚起している点が素晴らしかったです。同・向山+行木案は、閉じた家型の中央に地下鉄から地上へ上がる階段からインスパイアされた裂け目をいれ、公共的な通り道をつくり室内外を豊かにするという、ワンアイディアながら爽快な力がありました。
協賛者賞の佐藤案は、模型表現の際の建物外部の表現が残念ではありましたが、模型内部は実現性を感じることができましたし、壁を庭に置き換えたドローイングは、今回で一番印象に残ったものでした。同・一瀬+野口案は、水平スリットで入り込む光と風とそれをまたぐ上下階のズレ、それらをゆるやかに隔て繋げる収納がうみだす渾然一体となった関係に可能性を見ました。
ほか、選外では武井案の、 光と風の存在を自生する植物が可視化していくという批評性ある詩的な提案で、とても共感を持ちました。その植物と室内がより豊かにからみあう立体的な関係へと、育てていってほしいと思います。
学生にとって、このような、社会との繋がりがもてるコンペの機会は、すばらしく、主催者への敬意を持つとともに、末永く続くことを願っています。
Akiko Miya
宮 晶子(神奈川)/STUDIO 2A
http://studio2a.jp
平成23年5月14日(土)、トステム東京ショールームにて「2011住宅設計コンペ」の1次審査が行われました。今回のテーマは『環境住宅「光と風」』。審査員は吉田研介氏(吉田研介建築設計室)、豊田正弘氏(豊田編集室)、宮晶子氏(STUDIO 2A)の3名。応募総数は754作品、学生の趣向を凝らした作品が数多く集まりました。YouTubeに一次審査の様子をアップロードしましたのでご覧ください。
何をしても何処へ行っても「環境」問題が取り上げられています。しかし、これが商業主義に利用されると、ややもすると流行語になってしまうことがあるので注意しなければなりません。この問題は「生命の尊さ」と同義語と言っても良い不変不滅のテーマです。これから建築を目指す諸君は慌てることはない。造ることが環境に与える問題や、建った建築に住み暮らす際の環境問題など、テーマはいくらでも広がりを見せています。自分なりに何かに焦点を絞って取り組んでもらいたい。そのきっかけとして、これも建築に住むことの原点とも言える「光と風」を投げかけたいと思います。考えてみて下さい。
※1次審査を通過し、2次審査にエントリーした作品全てを入選とします。
※最優秀作品を始め各入賞作品のうち、設計者の希望するものについては、建築・販売を実現するため、JACSが全面的にバックアップ致します。