JACS 住宅設計コンペ 実例集

住宅設計コンペの優秀作品をご紹介いたします。2007年最優秀作品は、実際に建築され、現在もモデルハウスとして公開中。
2008年の最優秀作品も完成致しました。全国より集結した若き建築家による力作をご覧ください。
また、各年最優秀作品をはじめ、学生による優秀な作品を現実に建築して頂けるメーカー・工務店・業者を募集しております。
作品の図面などの詳細をご希望の方は、JACS事務局までお気軽にお問い合わせください。


2015年住宅設計コンペ:『母の家』〜身近な高齢者の1人住まいを考える〜

「母の家」は、お母さんがいない人は父の家でもいい。
お父さんもいない人は親戚のおばさんでも、隣のおじさんでもいい。
コルビュジェの「母の家」も実は両親のために設計した「レマン湖畔の小さな家」だったが、
要するに、その家の住人を、身近な具体的な人の一人住まいを設定して設計してほしい。

つまり一般化した抽象的な施主を想定するのではなく、
その人はほんとうにこの家を喜んでくれるだろうか、持ち物や家財道具は収納できるだろうか、
その人はベッドは嫌がるかもしれない、食事は座って食べたがるかもしれない、と具体的な要求にどうこたえるか、それを見せてほしい。

もっともベンチューリのように、他の人だったらたぶんやらせてくれないような奇妙な仕掛けやデザインを、
母だからやらせてくれた、というひともいるかもしれない。 それはそれで良い。
そのかわり歴史に残るような「かたち」でなければ、母に気の毒だ。
そして当然母は間もなく老いる。 コルビュジェも「母の家」を建てたころ、他の住宅ではさかんにガラス張りの吹き抜けの部屋を作っていたが、
91歳まで住んだ母のためには吹き抜けのアトリエのような部屋はつくらなかった。
つまり、齢をとる母を意識して設計して欲しい。



jury(審査員)

吉田 研介Kensuke Yoshida
吉田 研介
吉田研介建築設計室
高橋 晶子Akiko Takahashi
高橋 晶子
ワークステーション
武蔵野美術大学教授
大西 麻貴Go Hassegawa
長谷川 豪
長谷川豪建築設計事務所

審査員講評

今更言うまでもないが、建築は「内」と「外」を考えなければならない。「外」とは近所であり、町であり、都市である。そして社会のシステムもある。一方「内」は家具であり、収納であり、部屋である。そして生活のシステムがある。この両方の接点、重なりのところに建築がある。
しかし学生の皆さんは、どうも「外」を考えることに偏っているように思う。否、学生に限らず建築界一般もそうではないかと思う。「内」の話にこだわると、個人的嗜好の、どうでも良いようなことで、それより都市や社会を論じることが建築の上位にあると思われている。
今回もまた「内」が疎かにされた。私はそれを避けようと「母の家」という身近に考えられる、そして考えなければならない事項が抽象的でなく見えていると思ったのだが、やはり「外」に傾いた。勿論それも結構だが、それなら社会のシステムや制度を十分考え、もっと社会的にも主張が通るような勉強をしなければならないと思う。思い付きならすぐ消える。
否、非難ばかりで暗くなるが、勿論前提に「よくやるなあ」と感心していることを言わねばならない。コンペに注がれるエネルギーは膨大で、こんなに率の悪い「行為」も珍しいと思うが、「これがいつかは役に立つ」などとは言わない。すでに出さなくても良いのに提出したこと自体「凄いことだ」と拍手を送る。

吉田 研介


もっとも身近な母(家族)というお題は、親しみやすい一方、意外に難しかったのではないでしょうか。家族が自分の記憶の重要な部位を占めているので客観化が難しく、情報整理や計画、建築の提案というある意味俯瞰的な視線にシフトしにくい気がします。
その難しさを乗り越えて、母が少しずつ歳を重ねながら楽しく活き活きした毎日を送るためには何が必要か、自然でリアリティある設定で建築的提案も魅力的な作品に出会えて良かったです。 一人暮らしの不安と寂しさをやわらげる場・インターフェイスがあること、長い時間を過ごすプライベートな場が豊かであること、家の周辺とよい関係が生まれそうなことが、入賞作に共通していると思います。
加藤案はイームズハウス木造版とも言える清々しさをもった作品で、融通性に富む単純明快な体系が住み手に寄り添ってくれそうです。 市場案は一筆書きの図式が豊かな空間と生活の厚みに消化できている見応えある作品です。道路側と畑(眺望)側を結ぶ回廊は驚きを与えてくれました。

高橋 晶子


最優秀賞を獲得した市場靖崇さんの「ひとりの場所とみんなの場所」は一次審査のときからとても秀逸な案だと思った。
プレゼンテーションのドローイングも魅力的だったが、二次審査で模型を見てさらに好感を持った。プライベートとバブリックをそれぞれ家の対角に配置して、それらの関係性をテーマにするこの案は、母の家というお題を「単身者住居と地域コミュニティ」という社会的な課題に上手く結びつけている。それだけでなくL型に曲げた内廊下と外廊下の2つを中央に配置するというとてもシンプルな解法で、内部と外部、プライベートとバブリックがグラデーショナルに繋がった豊かな空間が実現されている。
近年日本の小住宅においては無駄な空間の代表格である廊下はできるだけ省かれる傾向が強い。そんなネガティブな印象の強い廊下という建築の基本的なエレメントを変形させるだけで、こんなに単純で複雑な家ができる。つまり廊下そのものを再発見している。そこもまた素晴らしいと思った。

長谷川 豪


応募要項


過去の住宅設計コンペ入賞作品集

2014住宅設計コンペ 応募要項(PDF形式/868KBB)

2013住宅設計コンペ入賞作品集 「郊外住宅の新定義」(PDF形式/約7MB)

2012住宅設計コンペ入賞作品集 環境住宅「自分の家」(PDF形式/約8.3MB)

2011住宅設計コンペ入賞作品集 環境住宅「光と風」(PDF形式/約6.6MB)

2010住宅設計コンペ入賞作品集 「住まいの原点を再考する」(PDF形式/約6.6MB)

2009住宅設計コンペ入賞作品集 「50年デザイン住宅 〜50年後の未来にも支持されるデザイン〜」(PDF形式/約7.3MB)

2008住宅設計コンペ入賞作品集 「環境」(PDF形式/約6.0MB)

2007住宅設計コンペ入賞作品集 「未来」(PDF形式/約4.8MB)